初代DJI NEOが発売されて1年(2024年9月6日発売)、少し大きくなりバージョンアップしたDJI NEO 2が先日発売開始となった。被写体トラッキング機能を有するDJI NEOはセルフィードローンの位置づけで展開されたいたが、FPVドローン撮影をするには難しかった。(理由は4K30fpsでは遅延が大きく飛行できない&FHDの画質低いこと)しかし、今回のDJI NEO 2は屋内FPVドローン撮影の可能性を秘めているかもしれないと思い購入にいたった。
ポイントとしては、前方に搭載されたセンサーによる自動追尾機能の増強、FPV飛行の安定感が増したこと、イメージセンサーは変わらないが4K30fpsから4K60fpsに映像伝送が拡張され、遅延も解消、結果的に画質が向上している。こうした点にポイントをしぼってDJI NEO 2の解説をしていく。
※この記事では特段の注意が無い限り、
DJI Neo 2デジタルトランシーバーを搭載したバージョンの前提で記載していく。
https://www.biccamera.com/bc/item/14622816/
目次
初代DJI NEOとDJI NEO2の比較①画質
イメージセンサーのサイズは「1/2インチ」であり、どちらも変わらない。
しかし、結論から言えば、画質面で多少は向上していると言える。
実際の映像を見たとき、特に暗部のノイズの出方に差を感じた。
(上記の映像ではNEOとNEO2の露出設定を同期させるのを間違えていたため画質の正確な比較は難しい)
また、後述する飛行性能にも影響するが、そもそも画質とは別に映像伝送が改善されたことも重要だ。
DJI NEOは実質4KでのFPV撮影がほとんど困難(30fpsのため遅延が大きく操縦が難しい)だったゆえ、
FHD 60fpsでの撮影を余儀なくされていたが、DJI NEO 2では、4K 60fpsでの撮影が可能となった。
さらに、重要なのがブレの低下だ。
1軸メカニカルジンバルから2軸へと今回バージョンアップしている。
明らかに飛行時のカメラに伝わるブレが減ったことが操縦中にも見て取れた。
映像だけ見るとわかりづらいところもあるが、機体やカメラ自体の揺れはかわらないものの、
草などに対する細かな揺れ・微振動による変化がDJI NEO 2にはなくなっているのがわかるだろう。
(NEO)
(NEO2)
絞り機能のないカメラばかりを搭載することの多いFPVドローン撮影の場合、
NDをつけないと高シャッタースピードにせざるを得ない。
(それはそれでメリットは多くあり、シャッターアングル180度を盲目的に信じるのもおかしい)
そのため”jello”と呼ばれる映像の揺れが起きやすいが、それも元々の微振動が少なければ起きる可能性は大幅に減る。
実際の飛行中も、NEOではジェロを何度か確認したが、NEO 2では感じなかった。
こうしたジンバルの機能改善からも、DJI NEO 2の撮影映像における細かなブレは少なくなり、
スタビライズ処理(内蔵・外部ソフト問わず)の最終結果もクロップ量が減ることで画質面の向上にもつながると言えるだろう。
NEOとNEO2の比較②FPV飛行性能
どちらもアクロモードで飛行しているが飛距離をそこまで出してないので、
映像の通信品質はそこまで大きな差をまだ感じていないが、
DJI NEO 2は外付けするデジタルトランシーバーのアンテナがしっかりと立っているので、
初代NEOに比べたら圧倒的に通信距離は伸びるはずだ。
(アンテナの指向性は通信品質にとても重要な要素である)
また、映像伝送の遅延を大幅に減らせることがわかった。
上述のようにDJI NEOは4K30fps/FHD60fpsの映像伝送が限界であったため、
4Kで飛行させると大幅な遅延を感じることになる。
一方、DJI NEO 2は4K60fpsまで対応可能であり、
DJI Avata 2同様の映像伝送品質と低遅延性を実感することができた。
映像伝送品質が飛行性能に大きく影響しているということを理解してほしい。
操作性については、機体が大きくなり、
つまりはモータープロペラが大きくなったために揚力を相対的に大きくすることができる。
前作のDJI NEO(重量135g)に対してDJI NEO 2(重量160g)は25g重いが、
ひと周り大きくなったモーターとプロペラになった。
実際の体感としては、屋外飛行において高度変化や、スピードの緩急、ホバリングも以前よりは安定している。
重量増分に対する相対的なパフォーマンスは上がったと言えるだろう。
しかし、DJI NEO、DJI NEO 2ともに小型で非力だ。
屋外で飛行させていると常時風に左右され、映像にはブレが発生し続ける。
自作ドローンと比較すると思うような意図した飛行ができないことからも、
マニュアルモードとはいえ、コントローラーを使用して屋外飛行する機会はないように思う。
自動追尾・セルフィ機能が秀逸
モトクロスライダーに協力をお願いし、DJI NEO 2のフォローモードを用いた自動追尾テストを行った。
バイクの走行スピードはおよそ30km/h前後だという。
驚いたのは、トラッキング対象が外れても画面上に対象が戻れば再度追尾を再開することだ。
これまでのセルフィードローンの多くは、トラッキングが外れると、
その場に留まり続けて、再度対象が画面上に戻ってきても追尾することはなかった。
実際にセルフィ機能を使用したフィードバックなどを考慮した機能改善なのだろう。
ちなみに、その他CercleやDronyなどの自動撮影については、
特段大きな差は感じなかったが、「障害物を回避する」機能がとても良いと感じた。
トラッキング中の障害物回避
これまでのセルフィドローンは使えば使うほど困ることが出てくる。
例えば木の枝や岩、建物など周囲に障害物がある環境だと、避けることができずにぶつかってしまうことがある。
そのため、セルフィドローンの飛行は比較的広い場所で周辺を考慮して使う必要があった。
しかし、NEO2は上方・下方に加え、前方のセンサーがあるため、回避能力が高まったように思う。
家の中でも、林道でも、起伏のあるモトクロスコースだろうがどこでもよいのだ。
電線ほど細いケーブルだと認識できない場合があるが、これは人間でも一緒だろう。
飛行環境に気をつけることは必要だが、場所の制約をそこまで気にしなくても良いのはとても良いポイントだ。
ちなみに、以下のフォローモードでバック飛行をしているときに、
センサーによる回避行動をしていたのかは不明だ。
屋内FPVドローンとして使用できるのか?
ノーマルモード(またはスポーツモード)は、水平維持と高さ維持を行ってくれるため、
初心者でも安全にFPV操縦することができる。練習をすれば、
屋内施設やオフィスなどもFPVで撮影することは可能だろう。
ただし、水平維持と高さ維持にはトレードオフがあることを理解しておこう。
水平維持はロール・ピッチそれぞれのスティックを入れ続けている間は機能せず、
スティックを中央方向に戻す度に水平維持機能が働く。
つまり、前後左右の操舵を打ち続けないと水平状態をキープしようと機体が制御され続けるため、
水平線が斜めになったダッチアングルと水平のホライゾンアングルが繰り返されてしまう。
高さ維持が働くことにより、高度が”一定になりすぎ”ている。
また、意図した高度変化にラグ生まれ、カクカクとぎこちない動きになりやすい。
そして離着陸の保護機能により、地上付近だと自動的に着陸しようとしてしまったり、
障害物の上空に行く度に浮き上がるなど、意図しない高度変化が発生するだろう。
DJI NEO 2には、こうした問題に一部対応するべく、「障害物センサーのオフ」と「離着陸保護のオフ」機能がある。
これを設定することで、自動的に地上に着陸したり、障害物センサーによる自動ブレーキの機能を無効にすることができる。
なお、高さ維持を無効にするためには、ノーマルモードからマニュアルモードに切り替える必要がある。
その場合、スロットルスティックを中央固定ではなく、コントローラー後ろのスティックネジを調節して変更すると飛ばしやすい。
実際にこれらの機能をオフにしてノーマルモードで屋内FPV飛行をしてみた。
確かに、障害物センサーの直接的な回避機能はなくなったが、
それでも、行きたいところへ飛んでいくのも、高度変化をさせるのも難しいのは変わらない。
自作のマイクロドローンであれば、簡単に通過できるような狭隘部もDJI NEO 2だと難しすぎると感じる。
その理由として、姿勢制御に関するセンサーが搭載されすぎている点が挙げられる。
水平・高さ維持は一見メリットだが、制御を行うためのタイムラグや補正も発生する。
つまりは、ある程度飛行時の機能的な自動制御を「先読み」しなければ、
想定した動きに対処することができないということだ。
(これに関しては、DJI Avata 2も同様だ。)
映画やTVCMなどのプロ用途としては、
そもそものセンサーサイズやカラープロファイル(DJI NEO 2はD Logに対応していない)から
映像品質がネックとなり使われる機会はかなり限られるだろう。
それを上回るメリット(安全面や、小型ドローンでしかなし得ない表現など)がある場合、
使用できる可能性もあるが、画質面のみで判断されないためにも、どのような表現が可能か検証することが重要だろう。
個人的な所感としては、屋内FPVドローン撮影で、DJI NEO 2を使用するかと問われれば、使わない。
現在、全国で屋内撮影をする企画を考えており、DJI NEO 2を使用することも検討したが断念した。
自作FPVドローンの経験がない人のはじめの一歩としては良いだろうが、
画質面でも、操作面でも、出来うる映像表現を考えても「DJI NEO 2は、屋内FPVドローン撮影には向かない」と言える。
(イベント撮影やライブ配信などであれば、DJI Avata 2の方が重宝する可能性が高い)
自作FPVドローンを用いた方が画質面での品質も高く、
操作レスポンスの速さや柔軟性を考慮しても、段違いに使いやすい。
安心感や耐久性を捨ててでも、より自分の意思を反映しやすく、
危なかっしく見える自作ドローンのほうが、自分が飛んでいる感があるからだ。
以下は、たまたま訪れたとんかつ屋で軽くフライトした際の自作マイクロドローンの映像だ。
99g以下で航空法の対象外であり、DJI製のFPVドローン既製品と比べて自由な生きている動きが出来ることがわかるだろう。